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コンタクトの事は、お任せください

オルソKレンズは、乱視になって、でこぼこしている角膜の表面に力を加えて、平地にならしていくようなものです。
でこぼこした形がだんだん平らになっていくわけです。 それが、オルソ・ケラトロジーが乱視にも効果が出る理由です。

ところが、あまりにも強い乱視では、角膜のでこぼこに大きな高低差があるので、コンタクトレンズを着けてもきれいに圧排ができるとはかぎりません。 あまりにでこぼこした大地をローラーでならすのは、非常に苦労するのと同じです。
また乱視による角膜のでこぼこが強いと、コンタクトレンズそのものが角膜にうまくフィットしなくなるのも問題です。 レンズの位置がずれやすくなるので、目の中央部であるオプティカル・ゾーンの形づけが正しく行なわれません。
そうした理由で、乱視が強い場合も、オルソ・ケラトロジーは難しいのです。 それが可能な、すれすれのレベルがマイナス2ディオプトリーという乱視度なのです。
コンタクトレンズはどうしても着けられないという人がいます。 いくら夜寝る間に着けるといっても、目にレンズを入れることには変わりませんから、この異物感が我慢の限界を超えるという人にも、オルソ・ケラトロジーは向いていません。
年齢のいかない子どもの場合、レンズの取り扱いがうまくできないと事故につながる可能性もありますから、あまり小さな子どもさんにも難しいと考えるべきです。 現在、小学校二年生がいちばん下の年齢の患者さんです。
あくまでもコンタクトレンズによる治療法ですので、いくらお母さんが手伝ってくれたとしても、レンズの取り扱いが難しい年齢では、治療をはじめることができません。 このオルソ・ケラトロジーを開始するにあたっては、初診の段階でいくつかの検査を行ないます。
そこでさまざまな面から安全性を確認するのですが、その検査からも治療に向かない人が出てきます。 たとえば、眼圧の高い人の目には、何かの病気が隠されている可能性があります。
緑内障がいちばん多く考えられますが、他の原因で眼圧が高くなることもあります。 また角膜の細胞数が少ない人も、将来的に目の健康面で問題が生じてくる可能性がありますから、この検査の結果を見て、お断わりする場合もあります。

視力改善のゴールをどのレベルにおくか。 それによって患者さんの満足度は大きく変わってきます。
1.0まで必要だという人もいれば、0.1でも充分だという人までいるのです。 もともと0.1くらいの視力がある人であれば、1.0くらいのゴールを目指すのは当然だと思います。
ところが、もともとの視力が0.01の人に、1.0まで見えるようになりたいといわれても、これはまず不可能と思われます。 視力0.01の人が、自分のゴールとしてどの程度までの視力回復を設定するのか、どの程度まで見えれば満足とするのか、それは個人個人によってもまったく違います。
人によっては、「一度でもいいから裸眼で0.1の視力表を見てみたい」というレベルのゴールを設定する人もいます。 また人によっては、「メガネが薄くなっていくだけでも嬉しい」というゴールを設定する人もいます。
なかには「近視の進行を止めることができるだけでも充分」というレベルにゴールを設定する人もいます。 治療する側としては、運転免許に必要な0.7くらいまでは、裸眼視力を改善させてあげたいと思っています。
自分が望む視力のゴールをどのレベルに設定するかは、もっとも重要なポイントなので、これは治療をはじめる前に、患者さんとの間で充分に話し合っておかなければなりません。 患者さんのほうから、「どういう目的で」、「どこまで視力を良くしたいのか」、そのゴールがはっきり示されれば、治療する側としても、方針と計画がはっきりしてきます。
まず治療法を患者さんに充分に理解してもらい、今、自分の目にどのような変化が起こっているのか、それをわかっていただかないと、治療はスムーズに行なわれません。 オルソ・ケラトロジーは、患者さんと医師との、二人三脚の治療と考えてください。

オルソ・ケラトロジーには限界があります。 一段階のレンズでは効果が不充分であっても、レンズのデザインを二段階に進めたら、見えてくるかもしれない。
治療前にそういう将来的なことまで理解して、一段階のレンズを着けるのと、着けないのとでは、大きな違いがあります。 「治療の全体像」を理解した上ではじめるべきです。
「治療の全体像」が見えていれば、治療の不充分な時期に不自由な見え方であっても、忍耐強くその時期を乗り越えることができるでしょう。 この治療は、ある程度長い期間にわたって行なわれます。
ですから患者さんと医師との信頼関係やコミュニケーションがうまく取れないようでは、治療もうまく進んでいかないことになります。 医師と患者の相性も大切です。
「見え方」というのは、人それぞれによってまったく表現が異なるものです。 どんなにがんばっても、医師にわかるのは屈折率の変化や視力の変化などの、客観的なデータでしかありません。
本当にどういうふうに見えているのか、主観的な見え方というものは、その本人以外にはわからないのです。 ですから、客観的なデータだけで患者さんの視力の回復を判断するような医師は、不親切だと思います。
客観データだけで判断すれば良くはなっているけれども、実際には、「まだその見え方では微妙なところで不満が残る」という患者さんもいるわけです。 そういう事態に、いかに適切に対応するか、このことがまたオルソ・ケラトロジーを行なう医師に要求される資質だと思います。
裸眼で見える喜びというのは、近視でない人にはなかなかわかってもらえません。 この気持ちを、まず眼科医が理解してあげる、その姿勢が非常に大切だと私は考えています。

コンタクトレンズの専門家として有名な先生に、お話をうかがったことがあります。 その方はオルソ・ケラトロジーの効果をある程度理解した上で、このように話されました。
「なにも、わざわざオルソ・ケラトロジーでなくても、ふつうのコンタクトレンズでいいでしょう。 昼間にコンタクトを着けて良く見えれば充分なのですから」と。
これが一般的な眼科医が、それもコンタクトレンズを専門としている医師が持っている認識だとしたら、非常に反省しなければいけないと思います。 「コンタクトレンズをして良く見えれば充分だ」というのは眼科医の立場からの見方です。
「患者さんは、それで一応、日常生活に不便がないのだからいいだろう」という安易な判断です。 でも、そのような医師には、近視に悩む患者さんが「裸眼で見える!」ときの喜びが、まったく理解できないと思うのです。
コンタクトを外しても、なお良く見える喜びというのは、何にも代えがたいものです。 近視でなかったころの自分に若返ったような気持ちにさえなるのです。
逆にいえば、コンタクトレンズを外した瞬間に、あるいはメガネを外した瞬間に、突然ボーッとしか見えなくなってしまったときの、ものすごい悲しみ。 「ああ、自分はほんとに見えないんだな」。
そういうつらい気持ちを、近視の治療にあたる医師たちは理解しなければいけないと思います。 実際に、患者さんがテストレンズを外した瞬間「ああ、見える!」と叫ぶときの声、その喜びをニコニコして語るときの瞳。

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